フル板なら、大引けの引け注文数もわかる
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証券会社の提供するツールに、「フル板」というのがある。
楽天証券・SBI証券・マネックス証券・GMOクリック証券など、大手ネット証券では、フル板サービスが無料で提供されている。
通常の気配値表示では、売り板が8段・買い板が8段表示され、それ以外は総数で表示されるが、フル板は、通常の板情報(気配値)より、たくさんの売買注文を表示することができる。
これは東証の「アローヘッド」というスーパーコンピューターの全ての売買注文データを、逐次呼び出してくれるサービスだ。
つまり簡単に言うと「東証に出ている注文を、全部見ることができる」わけだ。
この「全部見ることができる」というのが、どういう場面で役に立つのか。
まず私が最初に便利だなと思ったのが、不成注文の数がわかると言うところだ。
不成注文というのは、大引け前に注文が約定しなかったとき、大引け時点で成り注文に変わって実行される注文だ。
たとえば今持っている株を220円で売りたいが、220円で売れなくても、今日中に売ってしまいたい場合。
こういうときに220円の指し値で売り注文を出し、「不成」注文にしておくと、場中で220円で売れなくても大引けで成り行き売り注文を出してくれる。
ところがこれでは、成り行き売りだから、大引けで上がって終われば高値で売れるが、逆に下げて終われば安値になってしまう。
そこでフル板の「引け数量」というところの数字を見て、大引けで売るか、今売るかを判断することができる。
通常の気配値・板では、不成注文の数はわからないが、フル板サービスでは表示されるため、大引けで買われるか売られるかが、ある程度予想できるのだ。
売買注文の累計・総数の変化で、トレンドが読める
フル板サービスで便利なのが、注文数の累計表示だ。
たとえばある銘柄を1万株買いたいとき、いくらで指し値を入れればよいのか、通常の気配値表では、ぱっとわからない。
しかしフル板であれば、それぞれの指し値までの累計注文数が表示されるため、すぐにわかる。
たとえば下の図で、300個(30,000株)を買おうと思った場合、128円のところの累計が32,900になっているので、128円の指し値で注文を出せば、すぐに買えることがわかる。
フル板の例
またフル板の場合、注文累計数が全て表示されるため、その銘柄を取り巻く売買の注文バランスもわかる。
通常の板情報だと、現在値の前後の注文数と、それ以外の注文数(OVER/UNDER)を分けて表示しているため、売りの総数と買いの総数については、よくわからない。
しかしフル板ではそれがわかるため、「全体として売りが増えている」とか、「全体として買いが増えている」などという、売買参加者のトレンドが読めてくるのだ。
「売りの累計数が増えてくると、株価は上がりにくくなる」し、逆に「買いの累計数が増えてくると、株価は下がりにくくなる」。
たとえば、ストップ高をつけるような銘柄のフル板は、時間がたつにつれて買い累計数がドンドン増え、売りの累計数がドンドン削られていく展開になる。
逆に高値にいる銘柄の場合は、買い累計数が少しずつ減り始め、逆に売りが増えてくると下落の兆候で、ナイアガラの前兆になる事が多い。
また、貸借銘柄の場合、ストップ高付近で、いくらでも売りが湧いてくるようなケースもある。
通常のストップ高では、売り板がドンドン削られていって、最後にゼロになってストップ高張り付きになるのだが、いくら大口の買いが入っても、売りがゼロにならない。
そういうときは、しばらくすると「貸株注意喚起」「新規売り停止」が出て、逆日歩がついたり、品貸し料(貸株料)が10倍になったりして、翌日から強烈な踏み上げ相場が起こることがある。
これが「売り枯れ」ってヤツだね。